>作曲者のイメージを伝える 楽譜記号を知ろう
Vol1 楽譜記号ってバンドマンに必要?
演奏をする際に、音に強弱をつけたり、速さをかえるなど、細かいニュアンスを付け加える事があります。
これらの細かいニュアンスを楽譜上に表す場合、様々な記号や言葉を用います。
また、楽譜の表記を簡単にするための記号などもあります。
言葉については、イタリア語で書き表す習慣があります。
強弱記号 | 楽曲の表情を表すために、楽曲の強弱を変化させることがあります。 この、強弱を表す記号を、強弱記号(きょうじゃくきごう)といいます。 また、ある特定の音を強く、または、はっきりと表す記号を、アクセント記号、または、マルカート記号といいます。 |
速度標語 | おおまかな速度を指示する言葉を、速度標語(そくどひょうご)といいます。 特に、正確なテンポを表す場合には、メトロノーム記号を用います。 |
発想標語 | 楽曲のイメージがどんなものであるかを表す標語を、発想標語(はっそうひょうご)、 または、曲想標語(きょくそうひょうご)といいます。 |
奏法標語 | 演奏の際に、なめらかに弾く、細かく区切って弾くなど、 演奏に関する方法を表す記号を、奏法記号(そうほうきごう)といいます。 また、それらを表している言葉を、奏法標語(そうほうひょうご)といいます。 |
略記法 | 音符や楽譜を省略して、簡単な形に直して表記する方法を、略記法(りゃくきほう)といいます。 |
これらのような楽譜記号や標語は何かを正確に表しているのではなく、
作曲者が演奏者に「○○の感じで」と伝える、あいまいな表現です。
楽譜記号のない楽譜を渡されて演奏したのであれば、感情のない機械的な演奏になってしまいます。
楽譜記号は作曲者から演奏者へどのように演奏して欲しいか伝える、コミュニケーションのためのアイテムです。
楽譜記号は作曲者の心を伝えるアイテムなのです。
では、バンドマンには必要?
コミュニケーションをとるためには日本語でいいですよね。
バンド活動をしていて使うことは、まずないでしょう。
奏法標語だけは覚えておくと、譜面を書いたり読んだりするときに便利かもしれません。
クラシックなどを勉強したい方は覚えたほうがいいのではないでしょうか?
Vol.2 強弱記号
楽曲の表情を表すために、楽曲の強弱を変化させることがあります。
この、強弱を表す記号を、強弱記号(きょうじゃくきごう)といいます。
また、ある特定の音を強く、または、はっきりと表す記号を、アクセント記号、または、マルカート記号といいます。
では、強弱記号からみていきましょう。
@ 楽曲全体の強さを表す記号
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 |
ppp | pianississimo | ピアニッシシモ | できるだけ弱く |
pp | pianissimo | ピアニッシモ | より弱く |
p | piano | ピアノ | 弱く |
mp | mezzo piano | メゾ ピアノ | やや弱く |
mf | mezzo forte | メゾ フォルテ | やや強く |
f | forte | フォルテ | 強く |
ff | fortessimo | フォルテッシモ | より強く |
fff | fortessissimo | フォルテッシシモ | できるだけ強く |
強弱記号は、弱い:p(piano)ピアノと、強い:f(forte)フォルテを基本とし、
それに付加語や接尾語をつけて、その程度を表します。
強い | f | forte | フォルテ |
弱い | p | piano | ピアノ |
付加語・接尾語をつけて、もっと細かい表現をしてみましょう。
やや | m | mezzo | メゾ |
きわめて | 〜issimo | 〜イッシモ |
その他の表記例
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 | |
m.v | mezza voce | メッザ ヴォーチェ | やわらかく | どちらとも、ほどよい強さを意味するため、 mfと同じ意味であると解釈できます。 |
s.v | sotto voce | ソット ヴォーチェ | おさえた声で | |
con tutta la forza (tutta forza) |
con tutta la forza (tutta forza) |
コン トゥッタ ラ フォルツァ (トゥッタ フォルツァ) |
全力で強く |
A 強さの変化
<絶対的な強さで表記する方法>
強さを変化させる場所に、新しく強さを表す記号を書くことで、その場所から強さが変化します。
その時点で、もともとの強さは意味をなさなくなります。
新しく書いた強弱記号は、あらたに強弱記号が書かれるまで効果が継続します。
<相対的な強さで表記する方法>
それまでの強さと比べて、これからの強さを表記する場合、piuやmenoを使います。
piu | ピウ | より多く | もともとの強い、または弱いの程度を大きくする |
meno | メノ | より少なく | もともとの強い、または弱いの程度を小さくする |
これらを使った相対的な強さ変化の例をあげてみましょう。
p | 程度を大きくする | piu | → | piu p | 今までより弱く |
程度を小さくする | meno | → | meno p | 弱さを抑えて(今までより強く) | |
f | 程度を大きくする | piu | → | piu f | 今までより強く |
程度を小さくする | meno | → | meno f | 強さを抑えて(今までより弱く) |
<強さを次第に変化させる>
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 | 記号表記 | 記号の名称 | |
cresc. | crescendo | クレシェンド | だんだん強く | ![]() |
クレシェンド記号 | |
dim. | dimin. | diminuendo | ディミヌエンド | だんだん弱く | ![]() |
ディミヌエンド記号 |
decresc. | decrescendo | ディクレシェンド |
cresc. e dim. | クレッシェンド エ ディミヌエンド | クレッシェンドして、その後、ディミヌエンド | ![]() ![]() |
messa di voce | メッサ ディ ヴォーチェ |
B ある特定の音だけの強さを表すアクセント記号
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 |
∧ | accento | アッチェント | 強いアクセント |
> | accento | アッチェント | 弱いアクセント |
その他のアクセントを意味する記号を、下に紹介します。
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 | ||
fz | forzando | フォルツァンド | 強く | ||
forzato | フォルツァート | ||||
sf | sfz | sforzand | スフォルツァンド | より強く | |
sforzato | スフォルツァート | ||||
sff | ffz | sforzatissimo | スフォルツァティッシモ | さらに強く | |
sff | sforzand forte | スフォルツァンド フォルテ | 強いフォルテ | ||
rf | rinf | rfz | rinforzando | リンフォルツァンド | 特に強く |
下の記号は、強弱を突然変化させるときに使用します。
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 |
fp | forte piano | フォルテピアノ | 強いアクセントの後すぐに弱く |
fzp | forzando piano | フォルツァンド ピアノ | 強いアクセントの後すぐに弱く |
sfp | sforzando piano | スフォルツァント ピアノ | 強いアクセントの後すぐに弱く |
C さらに細かい表記法
記号や標語に言葉を添えることにより、さらに細かい強弱を表すことができるようになります。
イタリア語 | 読み | 意味 |
piu | ピウ | もっと より多く |
il piu | イル ピウ | もっとも多く |
(un)poco | (ウン)ポーコ | やや すこし わずかに |
poco a poco | ポーコ ア ポーコ | だんだんと 少しずつ |
un | ウン | 一つの |
meno | メノ | より少なく |
molto | モルト | 非常に 極端に |
これらの言葉を用いて表現された例をあげてみましょう。
表記 | 意味 |
piu p | もっと(さらに)弱く |
piu f | もっと(さらに)強く |
il piu forte | 最も強く |
poco p | やや(少し)弱く |
poco f | やや(少し)強く |
poco cresc. | わずかなクレシェンド |
poco dim. | わずかなディミヌエンド |
poco a poco cresc. | 少しずつ強く |
poco a poco dim. | 少しずつ弱く |
meno p | 弱くするのを少し抑える(やや強くする) |
meno f | 強くするのを少し抑える(やや弱くする) |
molto p | 非常に弱く |
molto f | 非常に強く |
molto cresc. | 極端なクレシェンド |
molto dim. | 極端なディミヌエンド |
D マルカート記号
マルカート記号は、「はっきりと」を意味しています。
このため、「1音ごとにアクセントをつける」ことになります。
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 |
marc. | marcato | マルカート | はっきりと |
Vol.3 速度標語
おおまかな速度を指示する言葉を、速度標語(そくどひょうご)といいます。
特に、正確なテンポを表す場合には、メトロノーム記号を用います。
@ 曲の速さを表す記号(速度標語)
イタリア語 | 読み | 意味 | テンポ(およそ) |
Largo | ラルゴ | ゆるやか | ♪=約40 |
Adagio | アダージョ | ゆっくりと遅く | ♪=約55 |
Lento | レント | ||
Andante | アンダンテ | 歩くような速さ | ♪=約70 |
Moderato | モデラート | ほどよい速さで | ♪=約90 |
Allegro | アレグロ | 速く | ♪=約130 |
Vivace | ヴィヴァーチェ | より速く | ♪=約160 |
Presto | プレスト | いそいで | ♪=約180 |
基本用語に付加語や接尾語をつけて、その程度を詳しく表現することもできます。
イタリア語 | 読み | 意味 | 例 | ||
molto | モルト | きわめて〜 (程度を強める) |
Molto Allegro | モルト アレグロ | 非常に遅く |
assai | アッサイ | Allegro assai | アレグロ アッサイ | ||
〜issimo | 〜イッシモ | Adagissimo | アダージッシモ | きわめてゆっくり | |
Lentissimo | レンティッシモ | ||||
Allegrissimo | アレグリッシモ | きわめて速く | |||
Vivacissimo | ヴィヴァーチッシモ | ||||
Prestissimo | プレスティッシモ | きわめていそいで | |||
〜etto | 〜エット | やや〜 (程度を弱める) |
Larghetto | ラルゲット | ややゆるやかに |
Allegretto | アレグレット | やや速く | |||
〜ino | 〜イーノ | Andantino | アンダンティーノ | やや遅く |
A 速さの変化
<絶対的な速さで表記する方法>
速さを変化させる場所に、新しく速さを表す記号を書くことで、その小節から速さが変化します。
その時点で、もともとの速さは意味をなさなくなります。
新しく書いた速度標語は、あらたに速度標語が書かれるまで効果が継続します。
<相対的な速さで表記する方法>
それまでの速さと比べて、これからの速さを表記する場合、piuやmenoを使います。
piu | ピウ | より多く | もともとの速い、または遅いの程度を大きくする |
meno | メノ | より少なく | もともとの速い、または遅いの程度を小さくする |
これらを使った相対的な速さ変化の例をあげてみましょう。
Lento | 程度を大きくする | piu | → | piu Lento | 今までより遅く |
程度を小さくする | meno | → | meno Lento | 遅さを抑えて(今までより速く) | |
Allegro | 程度を大きくする | piu | → | piu Allegro | 今までより速く |
程度を小さくする | meno | → | meno Allegro | 速さを抑えて(今までより遅く) |
<速さを次第に変化させる>
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 |
rit. | ritardando | リタルダンド | 次第に遅く |
rall. | rallentando | ラレンタンド | |
string. | stringendo | ストリンジェンド | 次第に速く |
accel. | accelerando | アッチュレランド |
<その他の速度標語>
イタリア語 | 読み | 意味 |
A Tempo | ア テンポ | もとの速さにもどす |
Tempo rubato | テンポ ルバート | 自由な速さで |
Vol.4 発想標語
楽曲のイメージがどんなものであるかを表す標語を、発想標語(はっそうひょうご)、
または、曲想標語(きょくそうひょうご)といいます。
発想標語には次のようなものがあります。
イタリア語 | 読み | 意味 |
animato | アニマート | 生き生きと |
con anima | コン アニマ | |
con brio | コン ブリオ | |
spiritoso | スピリトーゾ | 元気に |
con sprito | コン スピリート | |
energico | エネルジコ | 力強く |
con energia | コン エネルジア | |
feroce | フェローチェ | 激しく |
grandioso | グランディオーゾ | 壮大に |
marziale | マルツィアーレ | 行進曲風に |
appassionato | アパッショナート | 熱情的に |
passionato | パッショナート | 熱情をこめて |
con fuoco | コン フォーコ | |
con sentimento | コン センティメント | 感情をこめて |
affettuoso | アッフェトゥオーゾ | 愛情をこめて |
elegante | エレガンテ | 優雅に |
grazioso | グラツィオーゾ | |
con grazia | コン グラツィア | |
espressivo | エスプレッシーボ | 表現豊かに |
con espressione | コン エスプレッシオーネ | |
brillante | ブリランテ | 華やかに |
nobilmente | ノビルメンテ | 高貴に |
misterioso | ミステリオーゾ | 神秘的に |
giocoso | ジョコーゾ | 楽しげに |
scherzando | スケルツァンド | たわむれるように |
leggiero | レッジェーロ | 軽快に |
comodo | コモド | 気楽に |
capriccioso | カプリッチオーゾ | 気まぐれに |
tranquillo | トランクィロ | おだやかに |
dolce | ドルチェ | 柔らかに |
amabile | アマービレ | 愛らしく |
arioso | アリオーゾ | 歌うように |
cantabile | カンタービレ | |
dolente | ドレンテ | 悲しげに |
elegiaco | エレジアコ | |
lamentabile | ラメンタビレ | |
lamentoso | ラメントーゾ | |
con passione | コン パシオーネ | 悲壮に |
grave | グラーベ | 重々しく |
pesante | ペザンテ | |
serioso | セリオーゾ | 厳粛に |
maestoso | マエストーゾ | 威厳をもって |
Vol.5 奏法標語
演奏の際に、なめらかに弾く、細かく区切って弾くなど、演奏に関する方法を表す記号を、奏法記号(そうほうきごう)といいます。
また、それらを表している言葉を、奏法標語(そうほうひょうご)といいます。
奏法標語には次のようなものがあります。
記号 | イタリア語 | 読み | 意味 |
arp. | arpeggio | アルペジオ | 和音の各音をずらして演奏する |
gliss. | glissando | グリッサンド | 異なる2音を滑るように演奏する |
port. | portamento | ポルタメント | |
tremolo | tremolo | トレモロ | その音を急速に刻んで演奏する |
vib. | vibrato | ビブラート | 音を震わせる |
marc. | marcato | マルカート | ひとつひとつはっきりと |
stacc. | staccato | スタッカート | 音を短く切る |
ten. | tenuto | テヌート | 音をじゅうぶんに伸ばす |
fermata | fermata | フェルマータ | 音を非常に長く伸ばす |
legato | legato | レガート | なめらかに演奏する |
solo | solo | ソロ | 1人で |
tutti | tutti | トゥッティ | 全員で |
simile | simile | シミーレ | 前と同じように |
repeat | repeat | リピート | 繰り返し |
D.C. | Da Capo | ダ カーポ | 楽曲の最初にもどる |
D.S. | dal Segno | ダル セーニョ | セーニョ記号までもどる |